研修医になってはじめての分娩は、もちろん先輩とともに立会いました。その方は、初産婦さんでしたので、分娩室に入ってからは分娩まですこし時間がかかりました。
その間、助産師さんと一緒になって呼吸の指導をしていましたが、陣痛がどんどん強くなってきてその患者さんは私の手を強く握り締めて「先生、お願いしますね」と言ってくれました。
研修医になってまだわずか数日しかたたず、一人でお産ができない医師でも、患者からすれば主治医です。今頼りにするのは、分娩室にいる私と助産師さんだけでした。その言葉で、医師の責任の重大性を思い知らされました。
お産は順調にすすみ、元気な男児を出産されました。産後の経過も順調で母児ともに退院されました。
もう、あれから20年以上経過しているのです。あの時生まれた男の子は立派な青年になっているでしょうし、家庭を持って自分の子供が生まれているかもしれません。
そのひとの幸せを願わずにはいられません。